いつも医療法人ロコメディカル 江口病院をご利用頂きありがとうございます。
激しい猛暑が果てしなく続き、雨が降れば線状降水帯による豪雨や落雷での心配もありましたが、朝晩はようやく秋らしさも感じられるようになって参りました。
9月は再びモンゴル国に招聘され、今回はモンゴルの最西端、カザフスタンとウズベキスタン、中国の国旗に接して、アルタイ山脈の北側に位置するホブド(Khovd)県への肝臓病の医療支援に10日ほど行って参りました。
ホブド県はモンゴルの首都ウランバートルからさらに飛行機で2時間半掛けて移動し、診療支援をする村へはガレキや大草原を10〜15時間、ロシア製の軍用でもあるワズという輸送車で村々を移動します。従いまして移動に丸1日かかりますから、ひとつの村で1日診療するために移動日1日、診療1日、次の村への移動に1日を要します。そして村にはホテルや食堂、スーパーマーケットはもちろんのこと、上下水道やトイレなどもありませんから、医療センターの病棟に泊めて頂き、食事も地元の方々による炊き出しを頂きます。お風呂はもちろんありませんから、ペットボトルのお水とタオルで身体を拭きあげる程度ですが、極度に乾燥していますから、汗はかきません。
今回のキャラバン隊は私をはじめ、医師が4名、アシスタントが1名、ドライバーさん1名の合計6名で、日本人は私ひとりでした。
今回は3つの村(ソム)で、その村々の肝臓病の方々を中心に腹部超音波検査とフィブロスキャンという肝臓の硬さや脂肪肝の程度を測定する機器を日本から持ち込み、地元の医師や見学希望の医師も手伝ってくれながら診療を行いました。何ヶ月も前から診療隊が来ることは村の医療センターに連絡されていますから、診療の日には大勢の患者さまが早朝から医療センターにお越しになります。早朝から検査をご希望の患者さまが居られなくなる夜8時くらいまで、毎日、毎日、1日12〜14時間の検査を続けます。今回は少ない日で66名、多い日で106名の患者さまの検査をさせて頂くことができました。診療ではモンゴルの仲間に勧められて、モンゴルの民族衣装を纏っていますから、患者さまも私をモンゴル人だと思って、検査を受けられ、日本人であることがスタッフから説明されると本当にびっくりして握手を求められます。遊牧民の方々の手は分厚く、ガサガサしていますが、とても暖かい手でギュっと握ってくださいます。なお1日で106名の腹部超音波検査をしたのは、これまでベトナムでの94名を上回る私の最大記録更新となりました。
モンゴルも首都ウランバートル以外はひとつの県が北海道くらいの広さで、見渡す限りの大草原、砂漠、ガレキ、4000m級の岩の山で、世界でも最も人口密度が小さい国です。標高も1500m〜2500mくらいですから、走ると息切れします。とにかく移動は地平線を駆け抜ける感じで、古い時代にチンギス・ハーンが率いる騎馬民族が馬で大草原を疾走していたことが瞼に浮かびます。
モンゴルは今回で10回目の医療ボランティアのための渡航となりますが、世界で最も肝臓がんで亡くなる方の率が高い国で、肝臓病の早期発見、早期治療を支援することが不可欠な国です。今回もたくさんの肝臓病の方々の診断と治療の提案をさせて頂き、モンゴル国立病院の消化器部長へ紹介状作成をバトンタッチするという流れでボランティアをして参りました。
日本は医療や介護においては世界でもトップクラスの恵まれた環境で私たちは生活をしていますが、モンゴルでは例えばホブド県で病気が診断されても多くの人々は遊牧民でゲルというテント生活をしていますから、首都ウランバートルで専門治療を受けることになれば、移動費を作るために馬や羊、牛をたくさん売ってお金を捻出します。飛行機を使った移動もありますが、週に3回しか飛ばないし、高価ですから、患者さまは家族が運転する自家用車や乗り合いバスで1週間〜2週間を掛けて移動しなければならないこともあるそうです。そして帰ってくるのにも同じ大変さを伴います。同じ人間であり、元々、日本人の祖先とも言われているモンゴルの人々が日々、決して煌びやかな贅沢をすることはなく、自然と共存しながら、命を掛けて生活して、家族みんなが翌朝、元気で生きていたら、それで幸せ、毎日、毎日を家族で慎ましやかに生き抜いておられる姿を拝見して、色々な想いを巡らせながら日本に帰って来ました。
私が江口病院不在の際には大変、ご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます。
これからも医療法人ロコメディカル 江口病院をどうか宜しくお願い申し上げます。